株式市場で耳にするようになった「FinTech(フィンテック)」。金融の「Finance」と技術の「Technology」を組み合わせた米国発の造語で、今や金融業界の新しいトレンドとなっている。
スマートフォンの普及がFinTechを後押し
ベンチャーを含む多くの参入企業が既存の金融サービスを代替するさまざまなサービスに凌ぎを削るこの分野。今後の大きな注目テーマに浮上する可能性が十分なだけに、目を逸らすわけにはいかない。
膨大な情報を効率的かつ安全に処理することが常に求められている金融の分野においては、ITの活躍余地が極めて大きい。新しいソフトやソリューションが、著しい利便性の向上やコストダウンを実現するケースも稀ではなく、これらの開発企業は、例えベンチャーであっても既存の金融機関と競争できるだけの力を手にすることになる。
フィンテックの発展は、2008年秋のリーマン・ショックがきっかけを生んだとされている。従来の金融に失望した投資家やトレーダーらが、自らの専門的なノウハウにITを組み合わせることにより、新たなトレンドを作ろうと試みた。そうした動きを一挙に加速したのが、スマホ革命の勃発だ。
急拡大するフィンテック関連市場
コンサルティング大手、アクセンチュアの調査レポートによると、世界全体では2014年のFinTech関連への投資額は約1.4兆円で、これは2012年の約5倍に上っている。こうした急速な増加傾向は、金融機関に2つの未来シナリオを提示すると言う。
その第一は「デジタルな破壊」。商品を中心としたセールス姿勢を変えない銀行は、効率的なサービスを提供する戦いで新規参入者に敗北する。その結果差別化が困難化する中で、縮小するパイを奪い合う競争に突入するというもの。
もう一つは「デジタルな再構築」だ。技術的なイノベーションが尊重される中、独占的な地位の維持よりも顧客の人生を快適にすることのほうが重視されるようになる。インフラ面で短期的に優位に立つ銀行だが、長期的な付加価値はデジタル時代の顧客満足度をいかに高めることが解決できるかにかかって来る。
2014年の日本市場におけるFinTechへの投資金額は約60億円。今後も右肩上がりが顕著化していくだろう。アクセンチュアの未来図の妥当性はともかく、現在の業界動向がこうした見解を自然に流布させていることだけは事実だ。
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